インタビュー Interviews
末永 信太先生
- 病院風景
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- 留学先
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大阪母子医療センター泌尿器科
- 留学期間
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2021年4月-2022年3月
- 留学体験記
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この度ご縁をいただきまして、大阪母子医療センター泌尿器科で小児泌尿器科領域を1年間勉強させていただきました。当院は産科・小児科疾患を専門とする、大阪南部にある施設です。
約340の病床数を持ち、医師数は約110名、レジデント 40名の周産期・小児医療の基幹病院です。九州や北陸等遠方からの紹介患者も多く、ファミリーハウスという宿泊施設も併設されています。日本でも有数のハイボリュームセンターであり、他科の垣根も低く連携がとれた医療を日々経験させていただきました。
小児泌尿器科領域としては年間450件程の手術を行っており、年間で精巣固定術は約100例、VURに対する膀胱尿管新吻合術は約50例、尿道下裂は年間50-60例と多くの症例を治療しています。加えて総排泄腔外反症・遺残症や、小児腎移植等とても貴重な診療経験をさせていただきました。
本領域では手術加療ももちろん大事ですが、手術が必要かどうかの判断、そのための検査の重要性を認識いたしました。毎週排尿時膀胱尿道造影、核医学検査(腎シンチグラフィー、レノグラム)、ビデオウロダイナミクス等の検査を経験させていただき、なるべく侵襲を低く、放射線被曝を少なく、かつしっかりとした検査結果につながるような、有効な検査の行い方をご指導いただきました。なかなかそれぞれ慣れるまで時間を要しましたが、この検査を行うまでの経過、検査結果からどういった治療方針になるかを診させていただくことで、各疾患のマネジメントの流れが確認でき、教科書的な知識がより深く刻み込まれました。
研修期間中特に印象に残ったのは総排泄腔外反症・遺残症の症例です。1例出生から退院にいたるまでご本人、ご家族と向き合いながら過ごした外反症の症例を経験させていただき、出生後のご家族の心労やケアの難しさを実感いたしました。頻回に入院する10歳前後の症例や、成人以降QOLの点も含め悩みを抱えている症例を拝見し、それぞれ多様な問題を抱えていること、治療内容も1例毎に違うことなど本疾患の難しさを体感しながら学ばせていただきました。
また性分化疾患も多く経験させていただき、出生後から多職種合同のDSDカンファレンスで性別判定、ご家族へ説明するところから始まり、その後の手術加療、トランジション外来でのフォローまでみせていただき、とても貴重な経験をさせていただきました。これを機に自分が今まであまり勉強してこなかった発生学にも興味を持ち、重要性に気づかされました。
成人泌尿器領域しか経験のなかった自分にはすべてが新鮮であり、毎日とても興味深く充実した日々を過ごさせていただきました。今回いただいた経験を今後少しでも活かせるよう、ますます精進していきたいと思います。